〜大気の循環を調べる〜
大気はいったいどのように運動しているのかを見る。
その過程で、(最終)目標として平均残査循環を導き、その様子を実際のデータで調べる。
擾乱熱フラックスの収束と断熱過程による冷却はほぼ等しくキャンセルされる。
非断熱仮定は大きさ的にはそれらに比較して小さいが、温位は非断熱加熱によってのみ上昇し、
空気塊は温位が上昇した時に上昇するから、実際の空気の動きを見ようと思えば、
風速によるベクトル図ではなく、非断熱加熱によるものだけを評価できる速度を定義しなければならない。
それが、平均残査循環である。
より詳しい導出と子午面循環についての少し踏み込んだ話は ここ から覗いてください。
NCEPによる再解析データを用いている。
グリッドは、東西方向、南北方向にそれぞれ2.5°ずつ、144点、73点、鉛直方向に17(12)点取ったものである。
データは1月から12月までの月別の平均データをさらに1979年から1995年までの17年間に渡って平均したものである。
今回は多数の気候変数のうち、南北風、鉛直風、高度、温度のデータを用いた。
ただし鉛直風のデータは鉛直p速度としてデータが入っており、実際の風速を
あらわすには
このような解析
を行った。
なお、以下に示すグラフは全て、風速に変換してある。
(注) 以下に示す図において風の鉛直成分は20000÷(15×3.5)≒380倍に拡大している。
まず、TEM循環を見る前に、実際の風の向きを見てみました。
次に示す図は、6月(上)と12月(下)の風の子午面(東西平均してある)での吹き方です。


次に、TEM循環を見てみました。まずは、補正なしの計算結果です。微分は差分法(中央差分)を用いており、
端点では、その点ととなりの値から計算しているため誤差が大きくなっています。
6月(上)と12月(下)です。


上の図を見るとどうも風が循環していないように思われたため、微分項の値がおかしいと思われました。
そこで、3次元スプライン補間を用いて、微分項の値を決めなおし、TEM循環の絵を書いたのが以下の図です。
やはり、6月(上)と12月(下)です。


EPフラックスの図も3次元スプライン補間を用いて書いてみました。こちらも6月(上)、12月(下)です。


さらに、季節による変動を見るために、3月(上)と9月(下)のTEM循環の様子も下に示します。


◎ TEM循環がプログラム上正しくあらわされているかどうかを確かめるためにいろいろな気候変数の図版を出してみました。
どうぞ
こちら
もご覧になってください。
※ 3次元スプライン補間とは、データのある点で連続で、さらに、1次導関数と2次導関数も連続になるように データのある点と点の間を3次曲線でつないだものである。
平均残査循環と実際の風の場を比べる
と6月においては傾向がどの緯度、高度でもあまり変わらないが、
12月は北半球中緯度で大きく異なる。実際の風速場では北緯60度に主に上昇域があり、北緯30度付近、北緯80度付近に下降域がある。
しかし、TEMによる図では、北緯30度域で下降した空気が地面に達する前に(比較的高度の高いところで)北へと向かい、
北緯40度から60度にかけて幅広く上昇し、さらに北へ移動し、北緯70度から80度付近で下降している。
このような空気の運動は風速場のみでは得られなかったものである。
またスプライン補間を用いると、より滑らかに循環が表現された。微分係数の値が 実際により近づいたものと思われる。
今回は季節変化を取り入れようということで、3月、9月についても描いてみた。
実際の風速との比較は
こちら
を見ていただきた
い。
ちなみに、月ごとの変化もスライドショーになっております。こちら
をクリックしてから60秒程何もせずお待ち下さい。
戻りたい場合は1月のところで「戻る」リンクがありますのでそこでお戻り下さい。
EPフラックスについてもスライドショーがございます。ぜひ、
こちら
にもおいでください。
さらに、実際空気塊を追跡できるソフトがあるという。こちらは、筆者の時間のなさゆえにまだ使わせて頂いていないのだが、本当にこのような運動をしているのかが気になるところである。
また、当初この演習のはじめる前に言っていた「スライド型」と「圧縮型」については、 TEM循環を見る限り、そのどちらでもないことがわかる。北半球の高緯度における冬の空気塊の動きは、 予想を越えたものであった。その駆動原因は根本的にはいったい何かも知りたいところである。
追録
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土井
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2001.10.16 (Tue.) 14:09 土井 一生