海水データを用いた黒潮の流路決定
本課題は、課題演習D4で後に使用するFORTRAN言語の使用の練習として、
水温、塩分、圧力のデータより海水密度を求め、力学計算を行い海流の様子を見るというものである。
使用したデータは、東南日本太平洋データである。
段取り
- 密度の計算
海水の密度は、海水の状態方程式によって計算される。
- dynamic height の計算(力学計算)
先に求めた密度を使い、各点の dynamic height を計算する。
dynamic height とは、海流の様子を知るために有用なもので、
流れ(地衡流)は dynamic height の等値線に沿って流れる。
具体的な計算式や、詳しい dynamic height の説明は省略する。
- 求めた dynamic height を使い、地衡流を計算する。
計算式は、地衡流速の x 成分を u、y 成分を v、dynamic height を D とすると、
u = -∂D/∂y
v = ∂D/∂x
として計算される。(流れが dynamic heightの等値線に沿って流れるのはこの式からも分かる)
この式にでてくる空間微分きちんとプログラムできるようにするのが狙いである(と思われる)。
(注)データには圧力も含まれ、これを使って密度を計算している。この圧力データから直接、
u = -∂P/∂y
v = ∂P/∂x
として流れを求めても良さそうなものである。しかし、わざわざ dynamic height を求めて計算するのは、
生データ(おそらく CTD データ(Conductivity Temperature Depth))の圧力では精度が悪すぎるからである。
海水の状態方程式における圧力への依存はそれほど大きくないので(海水の状態方程式参照)、
一度それにより密度を求めそれを使って dynamic height を計算するほうが、精度がよいのである。
結果
図は、計算によって求められた太平洋表層の海流(左)および水温(右)の様子である。
左図の矢印の書いていないところは、陸域、または日本海域であり、データが存在しないので計算できないところである。
矢印の大きさが小さく見づらい図であるが黒潮にような流れが存在することが見られる。
四国南方から北上してきて、若干陸域(実際は陸ではなく水深の浅いところ)にかかり、
その後蛇行し北上して、東北東方で日本を離れ太平洋に向かって流れていっている。
残念ながら、親潮はうまくあらわせていない。
右図は水温分布であるが、この図に特に深い意味はない。ただ書いてみたかっただけである。
今思えば、水温分布より、dynamic height の等値線図を描いた方がよかったのではないかと思う
(この課題は今から約5ヶ月前に行った)。
今後、暇があればほかの深さでの流れの図や、dynamic height 等値線図等をのせたいと思う。
じつは力学計算には、「無流面」というものを仮定しなければならない。
その名の通り、その面では流れが存在しないと仮定することで、この面をどの深さに設定するかで
力学計算により求まる流速分布は変わってくる。今回は、(多分)水深約 1500 メートルに無流面を仮定した。