位の表現

ShortCut・・・ 1 以上の位  1 未満の位  英語の・・・illion

何かモノを数えるとき、どう言ったらいいかわからなくて困ったことはないだろうか?
たとえば・・・
「アボガドロ数は?」 「約 6000 垓」
とか、
「太陽が 1 秒間に放出するエネルギーは?」 「38 溝 5000 穣 erg」
などと言わなければならないことがあるかもしれない。
そういうときに言えなくて困ることがあるだろうからここにそれを書いておく。
10 0  一(いち)
10 1  十(じゅう)
10 2  百(ひゃく)
10 3  千(せん)
10 4  万(まん)
10 8  億(おく)
1012  兆(ちょう)
1016  京(けい)
1020  垓(がい)
1024  (じょ)
1028  穣(じょう)
1032  溝(こう)
1036  澗(かん)
1040  正(せい)
1044  載(さい)
1048  極(ごく)
1052  恒河沙(ごうがしゃ)
1056  阿僧祗(あそうぎ)
1060  那由他(なゆた)
1064  不可思議(ふかしぎ)
1068  無量大数(むりょうたいすう)
恒河沙とはガンジス河の砂の数くらい大きな数、という意味。阿僧祗、無量大数なども仏教用語である。
これらのことから、もともとはインドで研究・開発され、中国を通じて日本に輸入されたものである。

注意:
(じょ)という字は MS-IME にも今昔文字鏡にも載っていないことがわかった。
仕方ないので、「のぎへん」と「予」を含む字からそれらをそれぞれ取り出して合成した。
よって、この字だけ gif-image である。
もう1つ、阿僧祗の「祗」という字で、つくりの一番下の横棒はいらない。
これもこのような字を作らない限りコンピュータ上には存在しない。
これら以外は、読み方等すべて正しい。

オレの回りには、「無量大数まで正確には書けないが、サラリと言える」という人はかなりたくさんいる。
しかし、それは 1 以上の表現での話であり、1 未満に関しては書けるというのはおろか、言えるという人には会ったことがない。
オレは正確には書けないが言うことはできる。
これに関しては、1 以上の表現の言い方が話題に上ったときに必ず言うことにしてるのだが、
そして実際にずっと言い続けてることだが誰も覚えてないに違いない。
というわけで、1 未満も書いておこう。
10- 1  分(ふん)
10- 2  厘(りん)
10- 3  毛(もう)
10- 4  糸(し)
10- 5  忽(こつ)
10- 6  微(び)
10- 7  繊(せん)
10- 8  沙(しゃ)
10- 9  塵(じん)
10-10  埃(あい)
10-11  渺(びょう)
10-12  漠(ばく)
10-13  糢糊(もこ)
10-14  逡巡(しゅんじゅん)
10-15  須臾(しゅゆ)
10-16  瞬息(しゅんそく)
10-17  弾指(だんし)
10-18  刹那(せつな)
10-19  六徳(りっとく)
10-20  虚空(こくう)
10-21  清浄(せいじょう)
注意:
虚空と清浄は「虚」「空」「清」「浄」に分けられることもある。

糸くらいまでは野球でも(稀だが)使われるが、それ以下は普通は使用されない。
日常「小さい」という意味を持つ言葉が多い。塵、埃、微など。
これらもインドで起こったものである。
大きい位の数は使いやすいけど、小さい方はほとんど使い道がない。
たとえば・・・
「陽子の質量は?」 「1.67 清浄 mg」
となったり、
「プランク定数は?」 「MKS で 6.63×10-34 だから、え〜っと〜・・・」
となる。「mg」とかいう表現を使うと位の数を使う意味が失せる。それ以前に小数を使ってどうする。
プランクの時間なんて 10-44 やし、清浄が 2 個も入ってしまう。
昔の人は何でそこまで考えておかなかったのか。

とまあ、それはともかく、分厘毛糸で問題となるのは「割」の存在である。
「野球では 3 割 1 分 7 厘と言うじゃないか。分は 100 分の 1 ではないのか?」という意見が発生する。
しかし、5 分 5 分とか、腹 8 分目というときは 10 分の 1 である。
「5%5%の勝率だ。とりあえず、同じ値だからどっちが勝つかわからんな」と考える人はいないだろう。
残り 90%は誰やねんということになるし、「メシは 8%でやめとくに限る」なんていう人もあんまりないでしょう。
で、これに関しては、ちょっと前の読売新聞夕刊に書いてあった。詳しいことは忘れてしまったが、大雑把には
どこかで「割」が使われたとき、その 10 分の 1 を表すのに「分」を使ったために 1 桁ずつ落ちることになったそうだ。

ここから先はおそらくほとんどの人がその存在すら知らないであろうことを載せておく。
と言っても、オレから聞いたことある人が多いとは思うが。
オレ自身も正確に言えるようにはなっていないので、これを機に覚えようかと思う。
(というか、WEB に載せておけばいつでも調べられる)
ここでは、英語の million, billion, trillion の上にはどういう表現があるのか、ということに言及したい。
これら 3 つは、m, bi, tri で正にギリシャ語の接頭語である。
ということは、次は tetrallion とかいうのがあるのかと思ったら存在しない。
何でみんなが trillion 以上のものを知らないかという原因がこれにあるのではないかと思う。
tetrallion が存在しないなら、それ以上のものは存在しないであろう、と考えるのは妥当。実際、オレも中学からそうだった。
しかしながら、octillion という単語を偶然発見し、大学でフランス語をやったことが事態を好転させた。
で、ランダムハウス英和大辞典で random に調べ上げた結果、全て発見。(とは言っても、完全に random でもないけど・・・)
それは以下の通り。ちょっと長い前置き。
米式  英式
 106   106    million
 109   1012   billion
 1012  1018   trillion
 1015  1024   quadrillion
 1018  1030   quintillion
 1021  1036   sextillion
 1024  1042   septillion
 1027  1048   octillion
 1030  1054   nonillion
 1033  1060   decillion
 1036  1066   undecillion
 1039  1072   duodecillion
 1042  1078   tredecillion
 1045  1084   quattuordecillion
 1048  1090   quindecillion
 1051  1096   sexdecillion
 1054  10102  septendecillion
 1057  10108  octodecillion
 1060  10114  novemdecillion
 1063  10120  vigintillion
注意:
sixtillion ではなく sextillion。sexdecillion も同様。

イギリスとアメリカで増加量が違う。アメリカは 3 桁ずつ、イギリスは 6 桁ずつ。
イギリスではそんなに数えるものがあるのだろうか・・・
それはともかく、フランス語で 4 は「quatre」、15 は「quinze」という。つまり、4, 5 は「q」である。
また、20 は「vingt」である。これらが大きなヒントとなった。
後でわかったことだが、4人組、5人組・・・を quartet, quintet, sextet, septet, octet, nonet という。
(decet はない。それに相当する語も探してみたが見つからなかった)
ついでに、vigintillion の上はあるのだろうか・・・調べたけど今のところ見つかっていない。

この話はこれで終わろう。
なお、上で述べた日本の現在の位表現に関しては、江戸時代に吉田光由が書いた「塵劫記(じんこうき)」という本が基である。
これは岩波文庫から出版されているので、読んでみるといいかもしれない。オレは読もうとしていまだに読んでいない。


追記(2003.2.8):
このページを見てくださったアメリカの某大学院生の宮本さんから、
vigintillion 以降の数位表現に関するページを教えていただきました。(あんまり名前を出さない方がいいかもしれませんが)
とりあえず、リンクだけ張っておきます。
http://g42.org/MiscInfo/numbers.html
http://home.earthlink.net/~mrob/pub/math/largenum.html