赤道上での東西風および南北風の時間変化について調べる。
解析に用いたデータは、ECMWF の operational analysis twicedaily data(1979-1999)。
これは地球大気を次の様な格子に分割した点でのデータである。
- 経度方向に144分割(2.5度ずつ)
- 緯度方向に73分割(2.5度ずつ)
- 高度方向に15分割(気圧高度)
- 1日2時点(0時と12時)
まず、1998年11〜12月の61日間122時点における200mbでの東西風の時間変化を調べた。
横軸に経度、縦軸に時刻をとり、東西風の強さと方向を描いたのが図1の左図である。
ここで、各経度ごとに、をとっている。
- 北緯2.5度、赤道上、南緯2.5度の3点で平均
- 5時点ずつの移動平均
また、赤い領域は西風、 青い領域は東風を表している。 東西風は時間に関係なく一定方向の風向をしているのがわかる。
風向は変化していないが、その強さは時間と共に変化しているようである。
しかしながら、これではその様子が視覚的にはわかりにくいので、各経度ごとの2ヵ月間の偏差を図にしてみたところ、図1右図のようになった。
軸・赤青領域は左図と同じである。
図1:1998年11〜12月の200mbの等圧高度における東西風の時間変化
その結果、主に赤い領域が東進していることがわかる。 その周期は約1ヶ月くらいであると思われる。
同じ期間の異なった気圧高度に(300mb、400mb、500mb、850mb)についても同様にして調べた。
これらの計算結果は こちら に載せておいた。
次に、南北風についてもその様子を知っておくため、東西風と同様に計算を行った。
200mb の計算結果が図2である。
左図が南北風の時間変化、右図は各経度ごとでの偏差である。
黄色の領域が南風 、緑の領域が北風を表している。
300mb、400mb、500mb、850mbに関しては こちら をご覧いただきたい。
図2:1998年11〜12月の200mbの等圧高度における南北風の時間変化
南北風は東西風と違い、風向が時間とともに短周期的に変化している。
よって、右図は左図と大差のないものになっていることがわかる。 また、南北風は東西風に比べて風速が小さい。
ここからは、200mbでの現象について集中的に解析した。
200mbの等圧高度面ではいつもこのような波動の変化が見られるのか調べるため、他の年の同時期で同様の解析を行った。
計算した期間は1994・1995・1996・1997・1999年の11〜12月で、その結果を こちら に載せておく。
多少の違いはあるものの、だいたい同じような変化をしている。
そこで、200mbでの波動にクロス・スペクトル解析をかけた。
その計算方法については
擾乱を空間 Fourier および時間 cross-spectral 解析により、進行波および後退波に分離する方法
をご覧いただきたい。
その結果、1998年の2ヶ月間のデータから次のような図が得られた。 左図は図1の右図と同じものである。
右図において、である。
- 波数は、負の領域が西進波、正の領域が東進波のもの
- 波数1とは、波長が40000km(赤道における地球1周分)の波動。2とは、20000kmの波長の波動
- 角周波数に関して、60を角周波数で割ったものが周期
(つまり、60日周期の波動は角周波数1、30日周期のものは2ということ)
ここでは、波長が約3300km以上、周期が5日以上の波動を載せている。
図3: 1998年11〜12月の200mbの等圧高度における東西風の時間変化のクロス・スペクトル解析結果
図3左図からは、どの時刻にも白・黒領域がおよそ1つずつあり、それが約1ヵ月の周期を持っているように見える。
つまり、波数1、角周波数2の波動があると考えられる。
そして、右図から推測したとおりのところにピークが存在するのがわかる。
そこで先の6年分のデータについて、東西風・南北風ともにクロス・スペクトル解析をし、足し合わせて平均をとってみたところ、図4のようになった。
左が東西風、右が南北風である。
図4: 1994〜1998年の11〜12月の200mbの等圧高度における
東西風および南北風の時間変化のクロス・スペクトル解析結果の平均
ここで、 波数・周波数方向に移動平均をとる 計算してみたところ、それぞれ図5のようになり、
図5:図4の波数・周波数方向の移動平均
波数、周波数が同じ各点において、図4の値を図5のそれでそれぞれ割ってやると、
図6:図4/図5
となった。白い部分が1以下(つまり平均値以下)、色つきは1以上(平均値以上)である。
図6から、
- 東西風は、短周期長波長の波動が卓越している
- 南北風は、様々な周期の中波長の波動が見られる
赤道域では、Kelvin波と混合Rossby重力波が卓越しているらしいのだが、 現時点でそれらとこの解析結果を結びつけるには至っていない。 約1ヵ月周期で数万km波長の東西波はKelvin波ではないかと思うのであるが、 それを裏付けることはできていない。
角周波数は最大14(約4日周期)までしか描いてないけれども、 慣性重力波は短周期の波動であるため、 元のデータが1日2回の観測であることから、 14日周期以上を計算しても、これを検出できるかはわからない。
ここでは、主に200mbしか解析していないので、 同時期の他の気圧高度に関しても同様の計算を行って、 200mbの結果と比較してみる必要がある。
というわけで、300mb で同様の計算を行いました。
現在までの解析内容をご覧になりたい方は こちら へお入りください。
400mb も計算しましたのでご覧ください。
500mb も計算しましたのでご覧ください。
850mb も計算しましたのでご覧ください。
赤道大気準二年周期振動 を遊びで作りました。